知らぬ間に友人にトラウマを植え付けていた話

急に思い出したので書きます。

 

トラウマというのはいつのまにか植え付けられてしまうなと思った話。



中学生の頃、家のテレビは何故かスカパーを受信出来た。親はそういった物を契約していなかったので多分隣の家の電波をコッソリ拝借していたからだと思う、そこでスペースシャワーTVで見たバンドのPVとかでオリコン以外の曲に注目し始めたり、関西のローカルのお笑い番組を見てはワクワクしていた。



 

なによりもハマったのがプロレスだった。
スカパーのGAORAというスポーツチャンネルにはいくつもプロレス番組があり、女子プロのGAEA JAPANみちのくプロレス、KAIENTAI DOJO、そして後のドラゴンゲートととなる闘龍門などの番組が放送されており、特に闘龍門は見た瞬間にクギ付けになった。 

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新日本プロレスでは見ない様な小柄な選手。なのにオシャレで見たことのない飛び技や、見たことのない動き、めまぐるしく変わる攻防で観客を魅了しており、真似したくなる要素が満タンだった。闘龍門のファンブックを買い、選手の私服公開みたいな記事で見たロンT+半袖の重ね着に憧れて似たようなものを買いに行ったし、選手と同じスニーカーを買って満足していた。

 

闘龍門を見ながら僕は布団相手に新しい技を開発に勤しんだ。スーファミクソゲー、スーパーファイヤープロレスリングのエディット機能での技表も参考にしながらどんどん技を仕掛けていく(布団に)。「この体勢からこう行くと○○って技になっちゃうから、、、ここからこうすると新しいな、、、」などオリジナルの技の開発もしていた。

 

新技を開発したら試したくなるもので、プロレス好きの友人ふっちゃんやら、そういうアホな事に付き合ってくれるしばちょとよく廊下でプロレスごっこに明け暮れていた。

 

開発からの実践にハマっていたある日。音楽の時間だったと思う、先生が別室で個人の歌唱テストをしている間、それ以外の人は合唱コンに向けた練習をしていた。先生がいない間ふざけてしまうのは中学生男子特有のもので、友人のヒロシを相手に「新技作ったから試させてよ!」と、今覚えばひどい理由でプロレスごっこを持ちかけていた。合唱コンの練習しとけや。

 

ぼくのかんがえた新技を解説すると、相手をお辞儀をさせ腕を足の下に通してもらう。僕は後ろからその両腕を掴んだ状態。ちょうど僕の顔の前にお尻が来る形になる。さて、そのまま腕を上にあげるとヒロシ自身の両腕でヒロシ自身のキンタマをギューとさせるという、”利用するのは相手の力”みたいな合気道精神にあふれた技。そんな合気道精神に魅力を感じてしまい「これは傑作が出来たゾ、、、」と、一人ニヤニヤしていた。

 

そのまま腕を上に上げてヒロシのキンタマをギューっとしゃくりあげていると、思いがけぬ事故が起こってしまった。ヒロシが倒れたのだ。

 

ドタンッ!!

 

股の間から通した腕を上げるので自然と腰が浮き、前に倒れてしまうのは理にかなっている。両腕は僕が掴んでいるので受け身は出来ない訳で顔面からモロに床に倒れた。




 

「ヒロシ!ごめん!大丈夫!?」

 

急いでヒロシのそばにかけよる。

今でも忘れない、ヒロシが顔を上げて立ち上がると鼻から血が"薄く開いた蛇口から出る水"の様にツーと垂れていた。ポタポタと出ていたのでなく、永続的にツーと流れていた。その時の血の色を見て「血って赤じゃないんだ、、、赤紫なのか、、、」と、床に垂れた血を見て思ったのを覚えている。

 

即、保健室へ連れて行き、応急措置をした。

 

給食の時間になり、僕は罪悪感に苛まれながら机で給食を食べていた。応急措置からヒロシが戻ってきた、ヒロシの鼻はワセリンか何かでテカテカになり、パッチを貼っていた。鼻の形が変わっていた、、、

 

 

 

帰宅するとその話は親にも伝わっており「ヒロシくんのお家へ行くよ!」と両親込みでヒロシの謝罪に行くことになった。菓子折りとしてケーキを買い、ヒロシの家へ謝罪に言った。

 

何を言ったか覚えてない。玄関で親の背中ばかり見ていた。ヒロシ母の「気になさらずに…」そういう態度が救いだった。

 

翌日、ヒロシは学校へ来ていた。病院へ行ったらしく鼻の包帯が変わっている。聞くと「軟骨が折れてしまった」とのこと。針金を鼻の穴に突っ込んで軟骨を矯正したそう。

自分で起こした事故だが耳が痛かった。

 

しかし数日もすると変形していた鼻も元の形に戻っていた。



 

その事件を境にプロレス技は禁止になった。

 


それから1年後くらいかな?

 


中学校の行事で職業体験というものを行った。生徒が2人ペアになり地域のお店のお手伝いにいき、仕事を学ぼうという授業である。僕は蕎麦屋へお手伝いに行った。皿洗いを主にしていたのだが洗剤の泡が飛び、とんかつを揚げる油に入ってしまったのを覚えている。

 

ヒロシは星野という生徒と魚屋さんに職業体験へ行った。そこでのお手伝いは魚の下ごしらえだった。ピンセットで小骨を抜いたり、サクを切ったり特にテクニックの必要のない仕事を任されていた。

 

その中で貝の下ごしらえを頼まれたと。作業としては包丁の背で貝を潰し、身だけを取り出す。

簡単な作業だ。

 

二人が作業を進めて行くと、突如ヒロシの動きが止まったらしい。

 

ヒ「あああ〜〜!」

星「ヒロシどーしたの?」

ヒ「星野、、、俺これダメだ、、、」

星「なになになに?」


ヒ「この貝を割ったときの感触、、、鼻の軟骨が折れた時の感触と一緒だ、、、出来ないわ」

 

そう言って貝の下ごしらえは全て星野に任せたとのことだった。

職業体験から帰ってきた星野から聞いた話だ。申し訳ない気分になった。

 


鼻の軟骨を折ると貝の下ごしらえが出来なくなる。友人に意外なトラウマを植え付けてしまったという話。

 

ヒロシ、ごめんよ。もうトラウマは乗り越えたのだろうか?ごめんなさい。