3312345678という電話番号

3312345678

嫌な響きである。
俺はこの文字列に嫌な思い出がある。この文字列は電話番号なのだが、さてどこにつながる番号かご存じだろうか?

この電話番号にかけると

 

「あーんッ!!あ、、、ああ!ダメ~ーッ」

 

と、女性の喘ぎ声が聞こえる番号なのである。エロボイスが聴ける番号として俺の半径5mではかなり有名だった。小学生の時の友人、東風(こち)くんが教えてくれたのだが、よく集まって桃鉄をやっていた「チーム桃鉄」が集まる度にここに電話を掛けては笑っていた。小学生当時、エロ=おもしろであったのだ。(ちなみにこの東風くんとは別の中学になって別れたのだが、ふと大学1年くらいの頃に会いたくなり連絡をとると、どうやら俺の地元の学校に通っているということで自宅に呼んだ。小学生当時、足が速くクラスの人気者であった東風くんの風貌はただ単に伸ばしただけの髪、ジーンズメイトで買ったような野球帽、デニムシャツかと思う様な生地の薄さのジーンズ、なぜかドロドロに汚れた運動靴という出で立ちで、公園に住んでいる笑い飯西田という感じでドアの前に現れた。ドロドロの運動靴{もはやズック}の理由を聞くと「遊園地のかき氷屋でバイトしているのでシロップが靴にこぼれるから」とのこと。そんなズックを私服にするなと思いながら、靴を脱いで上がってもらうと靴下もボロボロでいよいよ俺にも「わ!気持ち悪い!」の気持ちがこみ上げたが飲み込んだ。当時はコッチーと呼んでいた気がするが、その汚い靴下が俺を「東風くん」と呼ばせた。そうさせたのです)

 

話がそれた。

時は過ぎ、俺は中学生になった。エロ=おもしろではなく、エロ=エロと捉えられる様になった頃。俺は友人を家に招いては「こういう面白い番号があるんだけど!」と伝えて、スピーカーホンにしてエロボイスを聴いてはフィバっていった。友人を呼ぶというのは一種の防御だ。実際は「エロを味わいたいが一人じゃ怖いので友人と一緒に"オモシロとして"味わうことで、俺の中に咲いた小さな性欲を満たす」行為だ。オモシロで掛けてますよーーー!というのはポーズで、実際は横から見た時にトンファーかの様に、もしくはパクさんの朴の字の右側のように完全に勃起をしながら電話を掛けていた。カタカナのトと表現すればいいのだけど、朴の方が面白そうだったのでそう書いた、文句あっか?

 

ある日、いつもの様に友人とスピーカーホンでこのエロボイスを聴いていると、喘ぎ声のラストにもう一節あることに気付いた。

 

「〇〇な人妻が☓☓する話を聞きたい人は、△△△△ー△△△△に電話をかけてネ!」と。

 

なんと、別エピソードを聴けると言うではないか!さすがに友人の前でエロに興味津々とは思われたくないので、その場では掛けなかったが電話番号は即暗記した。いまだに関東の都道府県の位置は覚えられない俺であるがこういうのはすぐ記憶出来るのだ。ワイワイワールド2のパスワードも記憶している(反転させても使えるんだよネ!)

 

一人になった時、そちらの番号にこっそり掛けてみた。番号につながると中学生がフツーの生活では絶対に聴けないであろうどスケベな話が流れてくるではないか。3312345678はただの喘ぎ声なのだが、これはマグワイである!Mogwaiである!絡みである!辛味チキンだ!

 

コレにはさすがの俺っちもオナニーがしたくなる訳で。スピーカーホンにして横になりシコり倒していた。正直、艶やかな絡みの会話なぞ中学生に理解できる訳ないのだが「よく分からぬけど未知のエロなのだ!これは素晴らしいものだ!」という感じでハチャメチャにそれでいてドチャクソにバチボコにパワフル全開なぁみさえという感じに抜きまくっていた。ヌキ間久里代である。

 

この番号に繋がると最初に

 

「コノバンゴウハ…サンジュウ…ビョウゴトニ…ジュウ…エンノ…ツウワリョウガカカリマス」

 

みたいな音が流れるわけだがエロの前ではこんなものは靄(もや)。エロサイトの「18歳以上のみクリックしてください」の注意書き並みに無視を決めこみスプラッシュをカマしてみせていた。ちなみにネットのあの注意書きは「いいえ」をクリックするとYahoo!に飛ばされるのだが、あれのおかげで日本のポータルサイト=Yahoo!というのが根付いたのだと唱えている。

 

親が家にいないと俺はすぐ件の番号に掛けて覚えたてのオナニーをして「アヒアヒ」していた。

 

しかし悲劇は突然訪れる。とある日の夜、リビングで家族が話しているのが聞こえてきた。

 

「なにこの電話料金?お母さん覚えある?」

「いや、私知らん」

 

ま、、、まずい。どうやら俺のアヒアヒの料金の請求が来たようだ、別料金として請求されるのかよ?盗み聞きを続けてみるに、どうやら莫大な料金がかかっているらしい。もちろん呼び出され「なんだよこれは!なんに使った!!」とキレられた。中学生、ましてや性欲があることなんて親に知られたくない俺。とっさに「げ……ゲームの攻略情報を教えてくれる番号があるんだヨ……」みたいなウソをついたと思う。父親が俺の目の前で請求書記載の電話番号にかける。

 

「あーんッ!!あ、、、ああ!ダメ~ーッ」

 

リビングにスピーカーホンで流れる喘ぎ声。俺はめちゃくちゃに怒られ、納付書とお金を投げつけられ近所のampmに支払いに行った。店員さんが納付書の処理をしている間、ずっとレジ横にあるとれたて弁当のラックを見ていた。前なんか見られる訳がない、恥ずかしさと「家に帰ってもエロ坊主扱いを今後もされる」という事実で目の前が暗くなる。とれたて弁当のメニューを囲う枠がめちゃくちゃ赤かったのを覚えている。俺がブランキージェットシティーだったら「レジ横のラックのとれたて弁当の枠の赤さがいかしてるコンビニ」という曲を作ると思う。残念ながら俺はブランキージェットシティーではなく、オチンチンズットシャセィーだったので作曲は出来ないのだ。


「あのな!こういうのは変なとこにつなげさせて、お前みたいなバカの通話料で稼いでるんだよ!」

 

帰って父親に言われたこの言葉が重かった。


翌日、母親から告げられる。

 

「こういうのはな、学校の皆に伝えて気をつけなあかんで。連絡帳に書きや」

 

ウチの母親は妙に正義感が強い。こんな恥ずかしい状況があるだろうか?出来るだけ隠し通したいのに俺は連絡帳に書かなくてはいけなくなった。連絡帳にその旨を記し、帰りの会で提出した。赤川先生は俺の事を思ってか後日俺の名を出さずに「こういうのがあるから気をつけようね」と帰りの会で情報を広めてくれた。その間俺はずっと下を向いていた。

 

それから1年くらい経った頃だろうか?部活中にふざけたかなにかで顧問から職員室に呼び出しを食らった。顧問の説教を聞き流し得意の反省したフリでやり過ごす事に成功したのも束の間、それを聞いていた技術教師の守田(めちゃくちゃに俺のことを嫌っていた教師)が

 

「おっ!?お前はまたそうやって……!エロ電話なんて掛けてるからそんな事になるんだよッ!」

 

と、大声で言いやがった。職員室はクスクスとなった。その瞬間俺は「あ!赤川の野郎!裏では俺の名前出してチクりやがっていたのか!」と察した。

 

ふざけるな!恥ずかしい気持ちを圧し殺して罪を告発したのにこんなことになるのか!と言う事はコイツらはこの一年ずっと俺の事を「オナTEL(おなてる)君」と思っていたってコトー!?!?こ……コノヤロー……

 

以上が俺が人を信じなくなった理由の内の一つだ。

 

その後エロ電話やダイヤルQ2なるものはインターネットと共に廃れたのだが、女友達と電話で会話をしつつ、バレない様にオナニーをする忍ニー(シノニー)にメチャクチャハマったのは別の話。なんとこちらは莫大な請求が来ないんですよ。