なにかと人に勧めている本『狂人失格/中村うさぎ』

たまに自分の中で読書ブームが来る。と言っても新刊はほぼ買わず、アマゾンで1円の文庫になっている本を購入して、カバンの中に入れて通勤時間に読み、読み終わったら駅に捨てるという読み方が自分には合っている。本(漫画を除く)を読み返すことってほとんどないし、別にモノに思い入れはないからだ。特に好きな作家もいないし、著者で本を選ぶこともほぼない。

 

著者が気になりいろいろ読んだのは重松清くらいだろうか?従兄弟(現在ほぼ廃人)の家に行った際オススメというので疾走の文庫版を貰い、帰りの新幹線で読んだのがキッカケだったかと。従兄弟は暗い作品が好きな様で他にも桜井鈴茂だったりヒキタクニオなどの殺人が出まくる作品をやけに勧めていた。さすが俺の従兄弟である。小さい頃、俺が従兄弟の部屋でビビりながらバイオハザードをやっていた時、部屋のブレーカーを勝手に落とし、真っ暗になった部屋が怖くて慌てて泣き喚きながら外に飛び出る様子をテープレコーダーで録音し、その後俺に聴かせてきただけのことはある。俺はこの従兄弟から友人であってもハメるときはハメるという遊びを学んだのだ。

 

で、本の話。

本の話になった時に必ず自分が推す本が3冊ある。

 

狂人失格/中村うさぎ

ここは退屈迎えに来て/山内マリコ

けむたい後輩/柚木麻子

 

の3冊。

 

特に狂人失格は「コイツ性格悪いの好きそうだな」って人には必ず勧めている。

狂人失格/中村うさぎ

www.amazon.co.jp

 

優花ひらりという「私は昔、頭が良かった!私には文才がある!!!だから小説書いてます!賞にも応募してます!」といった感じで、毎日の様にお世辞にも可愛いとは言えない自撮りや小説をアップしているいわゆる痛い勘違いブロガーが実際にいる(もちろん仮名)。電波と呼ばれる類の人である。

 

この優花ひらりは某掲示板で個別のスレが立つくらい有名で、ことあるたびにコメント等でめちゃくちゃ叩かれる。しかし叩かれても叩かれても優花ひらりは自らの勘違いには気付かず(気付けず)、痛い発言を飛ばしまくる。掲示板では「こいつビョーキだろ!死ね」等のひどい書き込みで埋め尽くされている始末。


それを見つけた著者の中村うさぎが優花ひらりに感情移入というか、とある作家への私怨から文壇界に恨みを持っていたので

 

「こういう誰から見ても痛いヤツを私がプロデュースし、作家デビューさせてやることで、文壇界にも一撃喰らわせられるし、こういう『皆から叩かれている人=過去の何者でもない私』がデビューすることで、自身のコンプレックスの供養にもなる!」

 

と、考え優花ひらりに手を貸すんだけど、優花ひらりが手に負えないくらいのド痛で…という、ほとんど実話の小説。中村うさぎ自身「自身の作品で一番醜い」と言ってたような。しかも後日、中村うさぎは優花ひらりから名誉毀損で訴えられ裁判で負け賠償金を支払っている。

 

ネット等で叩かれまくっている人を見ると、ソイツがどれだけカスのような人であっても、匿名の複数VS個人という図になるので、逆に「この叩いてるヤツも別に良く出来た人間でもねえくせに!」と思い、コイツらも死なねえかなと思ってしまうことは結構ある。


中村うさぎはそれを本当にやろうとしていて、というかやりました。「ソイツら」をビビらせてやろうとしたんです。その行動力!!それも凄いのだけど実際にコンタクトをとってからの中村うさぎの苦悩が面白い。めちゃくちゃ振り回される。不快だけど面白い作品です。

 

コンプレックスを乗り越えたり、乗り越えられなかったりという話が好きなのですが(『恋愛小説家』とか『ゴーストワールド』とか『桐島、部活やめるってよ』とか)、狂人失格は

 

コンプレックスを『優花ひらりを導くことで掲示板住人が持つであろうコンプレックス』で乗り越える

 

という、何重にも重なっている構造で、恨み嫉み妬みで大逆転するみたいな闇パワー全開で大好きなのです。

 

 

最近LINEのグループトークで本の話になり、狂人失格を勧める文言を書いたのでコピペして補足して記事にした次第であります。

 

でも一回しか読んでないのでこういう本じゃなかったかもしれない。


オバQみたいな話だった気もしてきた。