やってみるまで分からないじゃん?という言葉

まもなく年賀状作成のシーズンズ(ayu)になるのだけど、この時期になると思い出しては「うわあーーーー!」となる思い出がある。数年前、会社で年賀状を作らされたトラウマが銀狼よろしく蘇ってしまうのである。

 

当時務めていた会社では、会社の年賀状のデザインや住所のシール作成などは新人が年末にやることになっていた。その年は僕と同期の女の子の柴田さんの2人に回ってきたのだった。

 

僕が所属していた企画部はほとんどの人が美大卒やデザインを学んでいる人ばかりである。じゃあ俺はというと絵は描けない、デザインが苦手、目が悪い、コミックボンボン派、出っ歯、すきっ歯、肌がカサカサ、足が臭いなどとデザインに関してハンディキャップだらけだった。その会社の面接もももクロあまちゃんの良さと最近のガチャガチャの良さを熱弁しただけで通った、ただのローテクならぬノーテクだったので、この仕事が回ってきた瞬間からずっとイヤでしょうがなかった。

 

デザインと言われてもまず何をすればいいかが分からない「分からないが分からない」状態だった。

 

後にこの「分からないが分からない」はデザインに理屈があることを知り氷解する。「このデザインの目的を考える→必要事項を抽出・優先度をつける・キレイに見えるように配置」というのがデザインの基本と本で学んだ。理屈派なので「感覚で理屈を理解出来ない」。だから「理屈で理屈を教えてくれた」ノンデザイナーズデザイナーブックなるほどデザインいちばん面白いデザインの教科書はすごく勉強になった。

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柴田さんは同期なのに一挙に仕事を任され、デザインも、進捗管理もバリバリこなす、いわゆるデキる人だったのもイヤな理由の1つだった。そんな人と組まされても「こいつ使えねえ」と思われてしまうのが関の山。(この柴田さんは後に期待に応えようとしすぎたためメンタルをやられてしまうのだけど)

 

僕の基本的な考えは

①「無駄なことは出来るだけ排除する」

②「出来る人は出来る人がやればいい」

③「学んできた人には敵わない」

④「プライドが高い」

 

の4つでお送りしているので「いや!じゃあ、デザインは柴田さんがやればいいじゃん!宛名シール作成とか、投函とかの雑用は俺が引き受けるから!だって俺が作っても素材集を切った貼ったのなんの思念もないおもんねえデザインしか出来ないから絶対社内プレゼンで採用されないっすよ?無駄無駄!」と完全にブーたれていた、心の中で。in my heart.

 

しかし、ブーたれてても担当は外れられない。仕方なく柴田さんとのデザインの打ち合わせに挑んだ。とりあえず1人2つづつデザイン案を作成してプレゼンに出そうということになったのだが、柴田さんは俺のデザイン出来ないっぷりを察してくれたのか「おおきちくんはデザイン要素の必要のない、今年の会社が出した商品を集めて集大成みたいな写真を撮って一面に埋めるってのはどう?」という提案をくれた。確かにそれだと写真を撮る時間はかかるけども、イラレやフォトショをカチャカチャやってパーツを作る必要がない。商品を組み合わせてデスクで撮るだけでいい。上に載せる文字もフォントがあるからなんとかなる。

 

ありがたい提案なのだけど負け戦なのは分かっていた。柴田さんは商品の画像にのフチ取り加工したり、ドロップシャドウしたり、素材集からお正月の重箱みたいのを引っ張ってきて重ねたりするなどやけに凝ったことをやるみたいだ。頑張らないでくれ、差が歴然になっちゃうから……

 

俺はというと負けると分かっていながら写真の撮影準備をして「これは誰の為になるんだろう?」とずっと考えていた。「よくこんな出来でプレゼンに持ってきたな」と思われない様どうにか頑張って62点の出来まで持っていく為に写真を撮っていた。62点を取れればなんとか「イマイチかな…」の評価は貰える、それ以下だと「これは何がしたいの?」と思われてしまう。なんとかやりたい事があったってことだけは伝わる62点という点数を目指していた。どう努力してもあの時の俺には62点が限界だったし、その62点の案も絶対選ばれないと確信していた。

 

案の定、その年の年賀状のデザインは柴田さんの案が採用された。

 

もう一個俺が考えたデザイン案もあるのだが、それは絵が描けない人でも出来るように会社のロゴにお正月風のアイコンを上手く絡めたような、デザリパ的というか、フラットデザインと言うか、快速東京の一ノ瀬さんのデザインを丸パクリしたイラレバリバリみたいなのを作ってお茶を濁したと思う。

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ichinoseyuta! 卒業制作

 

こんな感じの図形を組み合わせて結合!直線!みたいなのを作った。

 

 

こういう経験があるので「やってみるまで分からないじゃん」という言葉がすごく苦手で……

 

「やってみるまで分からない」という言葉は相対的に見た時の自分の力が分からない人は使ってもいいのだけど、相対的に見た上で「やるまでもない」と判断した人に使ってもあんまり意味が無いと思うのだ。

 

「自分に自信がある」というのはポジティブに解釈されるけど「自分に自信が無いという事に、自信がある状態」はネガティブに解釈されるのはちょっとシャクだなあと思ってしまう。どちらも自信があるということには変わりないのに。

 

「やってみるまで分からないじゃん?」と言う、一見ポジティブに聞こえる言葉と同じくらい「自分でそう思うんならやらないほうがいいんじゃん?」一見ネガティブに聞こえる言葉が浸透して欲しいと思う訳です。

 

  

 

こんな感じの性格なのだけど、技術がない人がアイデアで技術ある人よりもスゴイことが出来てしまうイリュージョンを見るのが大好きだ。

そういう意味でデイリーポータルZのこの記事が大好きです。

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みんなが空中に浮きたがってる中、浮くように見せる方法を編み出すってスゴイなあと見るたびに思う。