時間指定して送信出来るメール

スマホになってから無くなってしまったなと思う機能の一つに「時間を指定してメールを送る」というものがある、いわゆる送信予約だ。ガラケー時代は便利でよく使っていたのだが、夜中に携帯にメールをするのは失礼という文化失われつつあるのだろうか?伝えなくてはいけないことがあることに気付いたのが夜中だった場合、この機能が大変便利であった。朝7時くらいに送信設定しておけば、失礼無く確実に相手に伝えられるというこのシステム。オヤスミマンの間でも連絡してくれる便利な機能だった。

なぜスマホにこの機能がなくなったのだろうか?デフォルトでついていないよねこの機能?

 

この機能で思い出すのは俺が歳上女性をデートに誘った時の事である。当時、俺はハタチくらいだったろうか?ラジオのイベントで知り合った方達と仲良くなり、mixiで交流を深め、その知り合いに知り合いを呼んでもらい初対面の人含め飲む交流会みたいなのを率先 してよくやっていた。当時俺はmixiに好きだったラジオの感想とその時思いついたダジャレを交えながらレポートする脳の自動書記の様な日記を毎週書いており、検索から来たリスナーもなんやかんや見てくれていた、いつぞやからmixiは日記検索から来ることを非ウェルカムと思ったらしく、検索窓は使いにくい位置に置かれてしまった、俺の思うmixi衰退はソコである。

同じ番組が好きな人なら!ということで出会いにストイックだった。ラジオネームしか知らない様な人がどんな感じなのか気になるし、会ってみてつまらなければそれはそれで三年後にはネタになっているだろうという強い精神を当時は持っており、度々その会を行っていた。

 

S子さんという方は明らかマトハズレなコメントをしてくる人は、最初ネタでやってると思っていたのだが、会ってみると30超えの挙動不審なオバサンでリアルでもハズしていたので、裏で「なんだアイツは!」とか文句を垂れていた、皆の中でS子さんはネタキャラになった。他にも「私はお笑い芸人になりたいから作家になってくれ」と急に頼んでくる軽いメンヘラ(つじあやの似)だったり、「かわいい!」と思ってよく遊ぶようになった子をヴィレッジヴァンガードダイナー(ヴィレヴァンが経営しているちょっと高級志向なハンバーガー屋)に誘った所「ハンバーガーは市橋達也くんが捕まる前に最後に食べた物だから食べたくない!」と、殺人犯の市橋達也のオッカケ=市橋ギャルであった事が判明しあわてて手を切ったりと、てんやわんやな活動であった。そこであった人と未だにLINEしてたりするからmixiって良かったよねと俺は言える。

 

さて、その年上女性との出会いだ。いつもの様にmixi飲みの会場で知り合いと話していると、仲良くなった人を連れてくると言う。「びっくりするくらいキレイだよ」との発言に「へいへい」とライトな生返事を返していると芸能人で言うと「りょう」の様な黒髪でチョット目がキリッとした黒が似合う様な女性が目の前に現れた…。俺っち曰く「うわ……こんなキレイな人いるんだ……」と一目惚れであった。その方(りょうさんとする)は独身で、年齢を聞くと40近いとの事だったがどう見ても30歳くらいであり「こやつは魔女か……」と、夜な夜な思い浮かべては布団の中でバタンバタンしていた。そして今思い出してもめちゃんこキレイな人であった。

 

何度か飲み会で会ったくらいで、「二人で遊びたい!!」と思った俺ちゃん。しかしガッチガチの童貞、かついままで相対したことのない世代の人。こういう人にダサい所を見られたくない、童貞臭くない場所へ上手く誘いたい……そこで俺のスーパーコンピューター脳が弾き出した答えが「つるとんたん」であった。デッカイ器、大盛り無料、話題性あり、おしゃれなうどん(今でいうインスタ映えする場所)……完璧、ザ・マスタープランである!あとは、誘うだけ。

 

しかし、俺は恥ずかしかった……「つるとんたんへ行きましょう!」その一声がりょうさんに言えなかったのだ。言えたとしてもみんなといる時に「あ!僕つるとんたん行ってみたいンすよねェ〜」とto allな提案のみ。「りょうさん一緒に行きましょうや、トゥギャザーしようぜ!」の誘いを断られたとしたら、俺はもう立てない、立ち直れない。履いてきたティンバーランドブーツすら持ち上げることが出来ないくらい疲弊するであろう……

しかしこのどうしようもない気持ちを解消したい!しかし出来ない!俺は布団の中で駄々っ子の様にバタンバタンしながら「りょうさん〜〜かわい〜よ〜よ〜よ〜」と、寝返りを打ちまくっていた。寝返りの2060往復目でふと閃いた。

 

不可抗力で誘う方法があるじゃないか!文明の力を使ってさァ!メールのタイマー送信だよ!!

 

「りょうさん!今度、つるとんたん二人で行きましょうよ〜(照れ隠しのキモい顔文字)」

 

俺はVodafoneのシャープ製のケータイにそう打ち込み、朝8時12分くらいに送信予約をセットした。この微妙にズレた時間はもちろん送信予約メールだとバレないようにだ。ドキドキしながら布団に入るのだが、これが送られるのかと思うと、もうそれだけで恥ずかしいのと、その後の未来を想像してしまい興奮して寝られないのである。深夜に書いたラブレターは見返すと恥ずかしくなるのは知っていた。しかし、俺はその恥ずかしいを越えてまで、プライドを投げ捨てでも先に進みたい、見てみたい風景があったんだ。何日か「やっぱやめとこう!」と送信予約を取り消してしまう駄夜(だや)があったのだが、ある日ついに俺は寝てしまった。不可抗力(と自分を騙して)で誘い(いざない)メールを送ったのであった。

 

 

目が覚めた。

もうその瞬間待ち受け画面を見るのが怖い。返信は来たのか?上部に紙飛行機のマークはあるだろうか?(当時ボーダフォンのショートメール{スカイメールだっけ?}の通知は紙飛行機のアイコンだった)

 

確認する。通知はない……まだ起きてないか。そう思うことにした。

 

何分かすると紙飛行機のマークが上部に現れた。りょうさんからなのか!?もしくはまぐまぐメールマガジンなのか?分からない、正直分かりたくもない。内容で傷付きたくない。

 

俺は携帯を放置することにした。未だにやってしまうクセであるがメールに重要なことが書かれているのが分かっていると俺は寝かしてしまうのだ。中途半端な気持ちでショックを受けたら死んでしまうので、気分が高まるモードになってからでないと見たくない、見られない。出来たら深夜、静かな時に見よう、そう決めて深夜を待った。

深夜、紙飛行機のマークが4つくらいになっている。やっとメールボックスを開ける体調になった。思い出したけど俺はりょうさんの名前を電話帳登録していなかった。なぜだっけ?メールボックスにその名前を出したくなかった気がする、出来るだけ意識したくなかったのか?なぜだかは忘れてしまった。けどこういう気持ち分かる人はいると思う。

 

ツタヤの100円セールのメールの奥にあるりょうさんのメールを開いた……

 

 

 

 

 

 

 

後日、つるとんたんはたくさんの人と行った。俺はハッキリと覚えているのだが、みんなから二人きりで誘ったとイジられる前に自分から「もー!!りょうさん二人で行きたかったのに〜!!」と自ら率先してネタバラシすることで、弄られても傷つかない様に対処した。

 

未だにこのクセは直らないのだが、事実俺は悲しかったのである。二度と機械もしくは他人or酒の力などの不可抗力を利用して普段抑圧している願望を叶えるのはやめよう。そう思ったのである。何事も自分で出来る範囲で、できなければ自信をもつ努力のトライ&エラー、もしくはトライセラトプスが必要だ。

 

 

 

 

りょうさんからの返信は「みんなで行きましょう!」というとてもオトナなメールであった。

 

 

 

「そうっスよね〜!(キモイ顔文字)よっしゃ、行きやんす!」そんな感じに軽く返した。